2016センター試験「物理基礎」および「物理」について

2016センター試験「物理基礎」

全体


 第一印象は,簡単すぎる。文系生徒向きだからかも知れないが,内容も浅いし,時間も余るし。また覚えていたら答えられるものも多少存在する。手加減ということかも知れない。


1番 小問集合 20点

 問1は数学のベクトルの問題と同等で,易しい。ちょっと拍子抜けした。問2はエネルギーの変換で,大事なことではあるが,即答できる。
 問4の波の作図では,自由端反射を間違えなければ,平凡な問題。重ね合わせの原理。
 問5の銅パイプ内を落下する磁石は教科書にも載っているし,聞いていることも平易。教室で見せている教師も一定数いると思われる(私の授業で銅パイプではなく,アルミの細長い板上をすべらす)。


2番 波動と電磁気 15点

 波動分野・・・簡単。疎密波の密となる一を選択する問題も,ひねりなし。このあたりはもう少し工夫があっても良いのではないか。ストレートすぎる。
 電磁気分野・・・変圧器の問題は定番。交流送電線の電力損失は,最近センターに出たような記憶があります。これは間違えないようにしたい。
 回路や電磁誘導は出題されなかったのが残念。


3番 力学 15点

 エネルギー保存や投げ上げの問題。どの問題集でも扱うようなベーシックな出題。定期テストで出ても不思議でないもの。グラフ選択はあるが,目新しさのない平凡なもの。
 運動方程式やモーメントは出題なしで,これも残念。


感想
 出題されない単元があるのは仕方ないと分かります。解答時間は30分ですからね。でも,いくら文系向きとは言え,もう少し考える問題がほしい。設問数ももう少しあっても良い。これでは受験生は「物理基礎」をなめるのではないかと危惧する(杞憂か?)。
 まぁ化学生物地学各基礎とのバランスもあるのでしょうが,今時の文系受験生はこれくらいでいいということなのでしょうかねぇ・・・疑問です。

 文系生徒にはこんなに簡単な「基礎」科目を2つ解かせる一方で,理系生徒には文系生徒と同じ地歴・公民の問題を解かせる。何かバランスの悪さを感じる。お役所の方は何も感じないのでしょうか。


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2016センター試験「物理」

全体

 一昔前のようなある意味珍問めいた出題はすっかりなりをひそめ,標準的な出題となっている。そういう意味で,学習してきたことがよく試せる問題となっていて,良い傾向と考える。
 しかし,思考力を問える実験問題があまり見受けられない。これは残念である。問題集で見たことのある問題ばかりでは,パターンを覚える勉強法に陥ってしまう。今後の受験生のことを考えても,実験問題は頑張って出題してほしいものです。
 組み合わせ問題が増加している印象。個人的な感想として,あまり良いとは言えないです。基本的な学力を測定する狙いのはずが,全部合わないと点をあげない,ということだから好きではありません。まぁ設問によっては部分点があるので,そういうことを増やしてほしいものだ。また組み合わせ問題は,実質的に設問数の増加をもたらしている。今のところは適量の範囲内だがエスカレートしないことを祈りたい。
 新課程対応初年度の昨年度より,原子分野は大問で選択として出題されているが,今回も同様であった。また1番の小問集合からは消えたのは,現役への配慮とは言えやり過ぎでは?
原子分野を勉強した人は,6番は5番より易しく,選択すれば有利。



1番 小問集合 20点

 問1が易しくてホッとした。ここが難しいのは好ましくない(模試などでは結構難しい場合がある)。問3,波動の式は予想通り出ましたね。
 問5は比熱でなく,熱容量として出題。いつかそういう日が来ると思っていたが,引っかかった受験生は悔しいだろう。学習では小さな穴もふさぐことが肝要。
 全体として広く浅くの出題です。2番以降の大問とテーマがダブることもなく,よく考えられている。用語の問題も出たので,知識問題として用語については今後も注意が必要。


2番 電磁気 25点

 問2の電場の大きさの問は,ちょっとした盲点かも知れない。自信を持って正解した人は立派。
 問4では,ローレンツ力が向心力となる,ということを式にして解くのかと思ったが,単に図形的関係が分かれば答えがでる。もう少し工夫が欲しいなぁ・・・


3番 波動 20点

 波動の一般論は小問集合で少し出たからか,ここでは音波と光波の出題。前半は結構素直な問題で,受験生は安心して答えられただろう。
 音波。典型的なドップラー効果の問題。ここは点を取ってほしいところ。問1で波長と振動数を取り違えないように。
 光波。問3はさすがセンター!問い方が工夫されている。中身は工夫されていないけど。それより問4は中身も工夫されている。ちゃんと思考力が問えているので,良問ですね。


4番 力学 20点

 Aは難易度調整のチューニングが素晴らしい。ちょっと真似できません。
 Bも,いろいろな学習事項を絡み合わせた,素晴らしい問題。良問です。
 量的には多少物足りなさがあるけれど,それは仕方ないか。


5番 熱力学 15点

 冒頭で「熱をよく通す二つの容器・・・」とあり,等温変化であることに気づかなければならない。読み落としは禁物です。あとは状態方程式で。
 問3って,自分を疑うくらい簡単。逆に,落とし穴かと疑心暗鬼になってしまった。


6番 原子 15点

 教科書をよく理解すれば,何の曇りもなく解けるでしょう。暗記に走ると解けないかも知れない。やはり物理なので,理解が大切。
 総じて熱と原子の選択では,原子の方が圧倒的に易しい。時間もかからない。勉強さえしていればお薦めです。ただし,質量欠損のエネルギー計算などの数値計算が出たら,無理しない方が良いかも。高校生の皆さんは今後の参考にしてください。